「納棺」 (遺体の変化)
死後の遺体の変化について、以下説明します。
1:死斑
心臓が停止して血液の流れが止まると、血管内の血液は下のほうに集まります。
上になった部分の皮膚は蒼白になり、下になった部分の皮下の静脈には血液がたまっていきます。
このたまった血液の色が皮膚をとうして見えるのが死斑です。
死亡後20~30分で点状の斑点が出現し、死亡後2~3時間げ斑点が融合します。
死後10時間くらいまでは死後は固定しませんが、20時間以上経過すると固定します。
2:死体硬直
死後2時間くらい経過すると、筋肉内のグリコーゲンの減少と乳酸の増加に伴ってアデノシン三リン酸(ATP)が減少します。
この化学反応のため次第に筋肉が硬化し、関節が動かなくなる現象が死後硬直です。
死後2時間くらいで顎関節に現れ、順次全身の筋肉におよび、6~8時間で手足の筋肉に明確に認められるように なります。
8~10時間位までは、筋肉に力を加えて伸ばすと柔らかくなり、再び硬直を起こします。
死後およそ20時間で硬直は最も強くなります。その後は腐敗が強まるため、死後硬直は次第に解けていきます。
3:腐敗
遺体の腐敗は消化器系である胃や腸から始まります。
死後1時間内外で腸内細菌の増殖が認められます。
また、死亡すると胃酸や腸の消化液が胃腸そのものを溶かし、酵素による自家融解をおこします。
腸内細菌の繁殖と胃腸の融解によって腐敗が進行し、腐敗ガスが発生します。
この腐敗ガス中に含まれる硫化水素が血液中のヘモグロビンと結合して硫化ヘモグロビンが作られると、腹部が淡青藍色に変色します。この変色が全身に波及し、さらに腐敗ガスが発生すると、全身は膨らんでいきます。
腐敗が進行すると、全身は次第に暗赤褐色に変色し、膨らんだ死体は巨人のような外観を呈します。
さらに腐敗が進行すると乾燥し、体表は黒色に変色し、体の組織は腐敗汁を出して融解し始め、遂には骨が露出されます。
「 納棺」